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『君に会うまでは』 第十六章「誕生」 2

<前回まで>
『君に会うまでは』 第十六章「誕生」 1

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 結婚をするとこどもが自然にできるというのが、世間一般ではあたりまえ

のように考えられているのだろう。結婚していることがわかると、「こども

は?」と決まり文句のように訊ねられる。訊く方にとっては悪気はないのだ

ろうけど、不妊で悩む夫婦にとっては、心ないひと言に傷つけられていたり

するという。そんな話はいろんなところで聞き知っていたから、自分たちは

そんなデリカシーのない言動は控えようと思った。そして、自分たちもまた

結婚をして、まわりから訊ねられる立場となったのだ。

 もう二人とも若くはないので、できることなら早く子どもを授かりたかっ

た。祈るような毎日がひと月、ふた月と過ぎていく。望んでいても、思った

ようにこどもを授かることはないようだ。僕の知らないところで、彼女が不

躾なことを訊かれていないが気になった。

 妊娠する確率って数字にするといったいどれくらいなんだろう?きっとひ

とりの人間を生を受けるということは、奇跡的なことなんだろう。

 自分自身が完全でない負い目のようなものを、どこかで感じていたのかも

しれない。一度病院に行って、詳しく診てもらった方がいいのだろうか?そ

んな心細い気持が時々僕を苦しめた。

 季節は冬を過ぎて春がもうすぐそこまでやってきていた。休日の朝、目を

覚ますと広いベッドは僕ひとりだった。いつもはだいたい僕の方が早く目を

覚ますことが多かった。彼女、どこに行ったのだろう?と半分寝ぼけた頭で

考えていると、パジャマに僕のシャツを肩にかけた彼女が寝室に戻ってきた。

「おはよう」と彼女が囁く声に、声を出さずに微笑み返した。ブラインドか

ら差し込む朝の陽ざしが眩しかった。

「ねぇ大くん」

「ん?」

「できたみたい」彼女はうっすらと笑みを浮かべてそう言った。

「え?」まさか、ひょっとして…。

「赤ちゃんが…」

「ホントに!」

 僕は跳び起きて、彼女の両の手をとって身を寄せ、そしてお腹のあたりに

頭を近づけ耳を寄せた。

 信じられないけど、夢ではなかった。


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