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『君に会うまでは』 第十五章「結婚」 1

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『君に会うまでは』 第十四章「5年」 5

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 がん患者にとって一番不安なことは、やはり再発のことだろう。がんが発

見された部位が手術によって切除され、その後、抗がん剤による化学療法で

全身に転移した可能性のあるがん細胞をくまなく叩く。つらい副作用と闘う、

まさに闘病生活を終えて治療は一旦ひと段落するが、またいつかどこかでが

んが再発するのではないか、またあのつらいつらい日々を過ごすことになる

のではないかと不安になるのである。半年ごとに行っていた検査の結果が告

げられるまでの日々は、そんな心細いものであった。医療技術の高度化で、

がんの発見の精度も向上していることだろう。それでも、自身に起こった2

度の疑わしい検査結果と3度目の正直で何もなかったという事実はいったい

何だったのだろうか?

 そんこともあって、5年という節目の時が過ぎた。医師からも、ひとまず

安心してよいだろう、とうれしい言葉をもらった。なんとかここまで来るこ

とができた。両親にも心配をかけてしまった。これで少しは安心してもらえ

るだろう。そう心の中で感じていたけれど、それでもまだどこかで不安はす

べて拭いきれないでいた。

 仕事の方は毎日忙しく、残業続きで遊ぶ暇もないくらいだった。同期の仲

間や学生時代の友人なんかには、愚痴っぽく、それでいてどこか自慢げに話

している自分を感じていた。それでもどこか満たされない心があった。将来

を見据えた時、言いようのない心細さが襲ってくるのである。その正体はい

ったい何なのだろう。モヤモヤとした中でも、それはしだいにあるかたちと

なって浮かんでくるのである。満たされない心。仕事ばかりの空しい日々。

テレビドラマでは自分と同世代の主人公が、仕事に恋愛にまさに劇的な人生

を過ごしていた。会社からのいつもの帰り道、肩を寄せて歩く恋人たちとす

れ違った時にふと募るさみしさ。そんな悶々とした日々が今日も過ぎて行っ

た。

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