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『君に会うまでは』 第十四章「5年」 2

<前回まで>
『君に会うまでは』 第十四章「5年」 1

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 東京に戻るとまたいつもの日常が続いた。残業も多かったけど、仕事にも

丁度慣れてきた頃だった。そんなある日、独身寮の部屋の電話がなった。大

学時代の友人の知念光太郎(ちねんこうたろう)からだった。しばらく音信

不通であったこともあり、互いの近況や世間話をしたあと、知念光太郎がこ

う切り出した。

「今度、会えるか?東京にも行きたいから」

 電話の声は明るかった。

「ほんまに。ぜひぜひ」

 再会の日程を決めて受話器を置いた。



 知念光太郎と会う週末がやって来た。最寄り駅の改札で待ち合わせをして

いた。待ち合わせの時間に少し遅れて、知念が現れた。駅前の居酒屋に向か

う。こうして2人で飲むのは、久しぶりだったし、2人だけというのは学生

の時も少なかったかもしれない。飲んで食べて、二人ともほろ酔いの頃合い

になった。知念光太郎がお手洗いから帰ってきて席に着くと、あらたまった

ように口を開いた。

「田島、身体の具合はその後、どうなん?」

 大学時代に長期休暇したことを思い出して、そう訊ねたのだろう。

「一時は死にかけたけど、もうすっかり良うなったよ」

「でも良かったな。一時は留年するんちゃうかなと思ってたし、留年なんか

すると就職にも影響するやろうし。お前守られてるな。でもなるべくしてそ

うなったんやろな」

「うん、まあそうなんかな。でもほんまラッキーやったよ」

「俺、最近、つくづく思うねんけど、世の中には人には見えへん流れってい

うもんがあって、その流れに乗ってるもん、流れに逆行してるもん、いろん

な人間がいてるんやなと思っている」

 知念光太郎が神妙な顔をしてそう話した。少し大人っぽく見えた。

「知念、おもろいことゆうな」

「おまえ、こういう話しって信じへんか?」知念光太郎は覗き込むように顔

をこちらに向けて話した。

「俺はどっちかというと現実主義者やから、眉唾もんはちょっと…」

「眉唾もんか…。おまえなんで病気したんやと思う?」

「えっ?なんでかって…それは、食生活とか睡眠不足とか、あの頃乱れとっ

たからなあ…」

「うんうん、でもちゃうで。お前が病気になったんは、お前自身が望んだか

ら病気になったんやで」

 酔ってるのだろうか、知念光太郎の話が時々理解できなかった。それから

小一時間ほど飲んでから店を出た。まだ時間はあったので、2軒目を誘って

みたが、何やら予定があるらしく、今日はお開きにしようということになっ

た。駅までの道を二人で歩いた。

「田島、また会えるか?」

「もちろん。でも東京と大阪やとなかなか難しいなあ」

「お前とはもっといろいろ話したいんや。また連絡するよ」

 知念光太郎はそういって別れの手を差し伸べた。僕はその手を握り返した。

それから改札を通って、しばらくしてこちらを振り向いた。僕は改札越しに

手をあげて見送った。



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