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『君に会うまでは』 第十三章「就職」 1

<前回まで>
『君に会うまでは』 第十二章「復学」 5

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 あれから1年。去年の今頃は突然の入院生活で、目の前が真っ暗になって

いた。生まれてはじめて死を意識した。でもこうしてまた、歩き出すことが

できた。すっかり大学生としての普通の生活を送ることもできていた。今日

も東の空から太陽が昇って、西の空に太陽が沈むのを見届けられた。この当

たり前の日常に感謝する日々だ。

 今では一ヶ月に一度程度、通院するくらいだ。主に予後の検査とその結果

を聞くためだ。去年の夏に短く切った髪も、今ではすっかり伸びて、不自然

なところは感じなくなっていた。

 大学4年の最大のイベントは就職活動だ。理系の大学では自分の希望する

教授らの研究室に入ることになる。ほとんどの場合、この研究室、すなわち

担当教授の推薦で就職活動を進めることができる。企業との間に太いパイプ

のようなつながりができていて、面接試験で内定をもらうことができたりす

る。幸いなことに、世の中の就職事情は学生に有利な売り手市場であり、三

流大学であっても一部上場の名の知れた大企業に多くの卒業生が就職してい

た。

 このまま大学生でいられたらいいのにな。

 そんなモラトリアムな願望を抱く学生が多いことを知らせるニュースを聞

いたことがあった。でも、本音はそのとおりだった。いったい自分に何がで

きるんだろう。何がやりたいわけでもないし。もうしばらく考える猶予期間

がほしかった。

 それでも、時は止まることなく過ぎて行く。研究室のゼミで志望企業を決

めるように話があった。今日も大学の就職課を訪れ、ファイルされた企業か

らの求人票を捲っていた。何百枚もある企業の中から、いったい何を選べば

いいのか。たとえ選び出したとしても、自分が、この自分が企業から選ばれ

る存在なのか?そんな迷いの中でさまよっているような日々を過ごしていた。

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